福島の子どもを放射能被曝から救うために

放射能で汚染された環境の中で、今を生きる子どもたち

■拡大を続ける環境汚染
東電福島第一原発1号機が営業運転を始めて40年。3月11日の東日本大震災で「安全神話」は崩れ、3ヵ月経っても未だに大量の放射性物質の拡散を止めることができない。空気、水、大地、そして海へと地球上の環境汚染は確実に拡大を続け、海洋生物による放射能の生体濃縮が始まった。今後人への影響は未知数だ。

■保護者が抗議する「子ども年間20ミリシーベルト暫定基準」とは
4月19日、文部科学省は「福島県内の学校等の校舎・校庭等の利用判断における放射線量の目安」として、空間線量基準を年間20ミリシーベルトとした。これまで政府は年間1ミリシーベルトを基準としてきた。
この年間20ミリシーベルトは原発労働者が白血病を発症し労働認定を受ける線量に匹敵し、ドイツの原発労働者に適用されている最大線量に相当する。また文科省は、屋外で3.8マイクロシーベルト/時に相当するとしているが、これは労働基準法で18歳未満の作業を禁止している「放射線管理区域」(0.6マイクロシーベルト/時以上)の約6倍にあたる。このような膨大な被曝量に対して保護者はもちろんのこと、国内外で問題を指摘する声が上がった。御用学者の『健康への影響は大きくないので、心配ない』に対する保護者の不安はますます大きくなる一方だ。

■安全値は存在しない
『直ちに影響の出るレベルではない』などとどうして言えるのか。細胞分裂が活発な胎児・乳児・幼児・子どもは、幼いほど大人に比べてはるかに放射線の影響を受けやすいことは疫学的事実とされている。そしてこれから生きる年数も長く、積算量は増えていき、被曝のリスクは、あびる量が増えれば、比例して影響は確率的に大きくなる。たとえ被曝量が少なくても、低レベル放射線であっても、健康に問題のないレベル、すなわち安全値というものは存在しない。数年〜十年後にがんで死亡する確率(人数)が必ず一定割合で増えていくという。そして誰がそのくじを引くのか分からないのだ。

■年間20ミリシーベルト基準は速やかに撤回すべき
5月27日、文部科学省は当面の対応として『年間1ミリシーベルトから20ミリシーベルトを目安とし、今年度、年間1ミリシーベルト以下を目指す』と発表した。これは、福島の保護者をはじめ多くの支援者、市民運動団体からの要請を受けてのことだ。これについては一歩前進と評価できるが、一方で課題もまだ多く残っている。
今回の数値は、空間線量のみの「外部被曝」値だが、放射性物質が蓄積し、高濃度になった側溝や芝生・雑草などへの対応はどうするか。また呼吸や土埃、食事などで体内に取り込まれる放射性物質による「内部被曝」も考慮しなければならない。
土壌の汚染低減化への財政支援については、毎時1マイクロシーベルト以上の校庭・園庭に限っているが、子ども基準を示し、その上で必要な施設や場所の除染も実施すべきだ。

■「子どもの最善の利益」を保障するには
すでに自主避難を始めた人たちもいる。子どもが自ら住む場所を選択することは難しい。放射線拡散予想図から必要な場所でのモニタリングを実施し、結果を逐次公開すること。そして緊急事態を考え、被曝線量の高い地域、子ども施設・学校等においては授業停止、学童疎開等の緊急避難体制を準備し、福祉的・心理的ケアを用意していくことが必要だ。

私たち大人は子どもの将来に与える放射能の影響を、でき得る限り抑えるよう、最善を尽くす責任があります。
生活者ネットワークは、政府・文科省が福島の子どもを放射能被曝から救うための支援体制を整備するよう要求します。