『こころの健康推進』に向けた精神保健・医療・福祉の改革を!

2010年10月28日 15時19分 | カテゴリー: トピックス

REPORT NO.87 

平成21年度、厚生労働省は精神障害者家族会に対する調査によると
「初めて精神科を受診し診断を受けたとき知識がなかった(9割)」「信頼できる専門家に相談できるまで3年以上かかった(3割)」あった。学校の保健教育で精神疾患を学ぶことや、社会への正しい知識啓発、訪問支援体制・家族支援体制の整備などを求めている。体験者である本人、家族のニーズを受け止め、実現することで、国を支え未来を担う若者たちへの精神疾患の影響を少なくしていかなければならない。
「日本の精神保健・医療・福祉を変えよう」と全国から多くの当事者や家族と専門家が参加して進められた「こころの健康政策構想会議」の提言書が今年5月、当時の厚生労働省の長妻昭大臣に提出され、「こころの健康の保持及び増進のための精神疾患対策基本法案(仮称)」の制定を求めている。

■あなたのこころは健康ですか?
—「こころの病」は国全体の社会問題 — 

国民の12人に一人が現在精神疾患にかかっている。「こころの病気(精神疾患)」はいまや誰にでも起こりうる病気だ。自殺、虐待、いじめ、不登校、ひきこもり、DV、ドラッグなどが蔓延し、自殺者は12年連続3万人を超えた。これら社会問題の基礎にはこころの健康に問題があるといわれている。うつや統合失調症をはじめとした精神疾患の急増で、2005年には国民の40人に1人が精神科を受診中。生涯罹患率は人口の18%以上(5人に1人)となった。
WHO(世界保健機関)は、病気が社会に与える負担の指標DALYでは先進国のトップが精神疾患であるとして、2002年の早期精神病支援国際宣言において、地域社会への啓発、教育の提供、若者への教育、アクセス改善などを求めた。1993年厚労省が示したDALYでも精神疾患が20%を占めていた。がんや循環器疾患とともに国民の三大疾患と位置付け、精神保健医療改革に取組むべきだ。

■“若者のこころの病”は膨大な社会経済的損失
— 精神疾患の発病は10代後半から20代、30代が中心 —

諸外国の精神保健改革、早期支援はすでに始まっている。
《イギリス:1999年 精神疾患を三大疾患に位置づけた》
医療経済学者ポール・マックローン博士が精神疾患による膨大な社会経済的損失を明らかにし、社会的コスト節減の推計値を示したことで、ブレア政権下では国民の健康を損ねている、精神疾患・がん・心臓疾患を三大疾患と位置付けた。精神保健改革を国の基本政策として推し進め、この10年間で自殺率15.2%の低減少など成果をあげている。
《オーストラリア:1996年保健省と財務省調査 疾病障害による社会的損失の研究》
10代から20代の若者の健康問題は国の大きな財政問題。一番健康を阻害しているのが精神疾患だとして小学校、中学・高校向けプログラムでの精神保健教育を実施。
《ニュージーランド:1972年誕生の1000人の26年間の追跡調査》
26才時点で統合失調症を発病した者のうち、46%が11 才時点で精神病症状をすでに体験していた。

統合失調症は世界中どの地域でも100人に1人の発症率をもつといわれてきた。最近ではストレスの多い社会状況や地域、その人が抱えるストレスによっても変わってくるともいわれている。日本では、うつや統合失調症をはじめとした精神疾患が年々増え続けている。とりわけ青年期は一生のうちで最もこころの病気(精神疾患)にかかりやすい時期だ。にもかかわらず、学校教育ではほとんど取り上げられていない。精神疾患に対する知識・情報不足から多くの場合、本人も周囲も何が起こっているのか、相談先も分からず発症期を過ごしてしまう。こういった治療の遅れが重篤な障がいにつながっていく。今の精神保健医療システムでは若い人たちが早期から安心して治療できる環境ではないことが問題だ。こころの変調があったら、本人やその家族を早期から支援できるような医療体制や相談窓口の設置と中学や高校での精神疾患教育の導入が必要だ。

【イギリス国会議員アンケートより 08年】
(下院議員 95名  上院議員 100名)    
メンタルヘルスの問題  友人や家族に経験 94%                    自分自身が経験  19%

■発病初期から最善の治療・支援の提供を    
— 未治療・未支援期間の短縮で順調な回復へ —
統合失調症をはじめとする精神疾患は早期発見、適切な早期支援・家族支援で重症化・慢性化を防ぎ、よい回復につながることが世界中の研究で明らかになってきた。全ての市民が精神疾患・精神障がいについての正しい知識をもっていることが大切だ。本人、家族が社会から疎外されることなく、尊厳をもって地域で生活するためにスティグマ(烙印)、偏見、差別をなくしていかなければならない。また本人と家族のニーズに添った保健・医療・福祉分野での多職種専門家チームによる訪問支援(アウトリーチサービス)は地域生活に最も欠かせない。全国的な取組みが求められている。

*若者や家族を早期支援する
Wakaba外来 (都内の15歳〜25歳)
(ユースメンタルサポートセンター松沢)
東京都立松沢病院 世田谷区上北沢2-1-1

まずは電話で 03−3303−7211
平日9:00〜16:00
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